ルル部ノート

LOLに登場するルルを愛して止まないルル部のブログです。

エコーのバイオ・ストーリー(2021.11)

エコー
砕けた時を渡る少年
生まれつき天才的な知力を持っていたエコーは、ハイハイをするより前に、簡単な機械を組み立てることができた。両親のインナとワイエスは、息子には明るい未来を与えようと誓った──公害と犯罪に満ちたゾウンでは、エコーの才能は無駄になってしまう。息子にはピルトーヴァーの豊かさと可能性に満ちた暮らしが相応しいと二人は考えた。エコーは、両親が危険な工場での長時間労働に日々勤しみ、実際の年齢以上に老け込んでいく様子を見て育った。欲深い工場のオーナーや、せせら笑いを浮かべたピルトーヴァーの買い手たちが、彼の両親の働きから多大な利益を得る一方で、一家はわずかな給料しかもらえない。

全ては息子を地上の都市へ送るためだと、両親は自分たちに言い聞かせていた。

だが、エコー自身は別の見方をしていた。彼は欠点より何より、ゾウンに情熱と可能性に溢れかえった活気を見出していた。ゾウンの人々の勤勉さや機知、そして粘り強さが、純粋な発明の苗床を生み出している。普通なら滅亡していたような大災害の後で、彼らは活力に溢れた文化を作り上げてみせた。そのゾウンの精神がエコーを虜にし、幼い彼を駆り立てて、発明と技術革新に夢中にさせたのだ。

彼のような子供は他にもいた。肝の据わった孤児たちや、好奇心旺盛な家出した少年少女たち、そして野心あふれる成り上がり者とエコーは友達になった。ゾウンの人々の多くは学校教育よりも徒弟となる方を選ぶが、彼らのような「ゾウンのストリートチルドレン」は、迷宮のような街並みがその代わりだった。彼らは国境市場を突っ切る徒競走をしたり、最下層からプロムナードまで登ることに挑戦したりして、若さに任せて有り余る時間を浪費した。彼らは誰の指図も受けず、滅茶苦茶に、そして自由に走り回った。

ある夜、破壊されたばかりの研究所のガレキを漁りに一人で出かけたエコーは、驚くべきものを発見した。それは、魔法のエネルギーできらめく青緑色のクリスタルの欠片だった。ゾウンの子供なら誰でも、数々の武器や英雄に力を与えたというヘクステックの話を知っている。世界を変える可能性を秘めたクリスタル。その欠片をエコーは手に入れたのだ。彼は欠片をもっと見つけようと必死になったが、テクノロジーで強化改造された用心棒たちの足音が聞こえ、欠片を探しているのは自分だけではないことに気付いた。エコーは辛くも逃げ出して家に帰ることができた。

彼は持ち帰ったクリスタルを使って取り憑かれたように実験を重ねた。そして、あまり科学的とは言えないある実験の最中に宝石が爆発すると、きらめく微粒子の螺旋となって時空歪曲の渦を発生させた。エコーが目を開けると、そこにはガラスのように砕け散らばった複数の現実世界が見え、そしてバラバラに断たれた連続性の只中でパニックに陥った自分の「エコー」──つまりは自分自身たちが、そこからこちらを見つめ返していた。

実験は成功したのだ。

その後、エコーと「彼のエコーたち」による綿密な共同作業によって、彼が引き裂いてしまった「現実」を修繕することに成功した。最終的に、エコーは砕けたクリスタルの時間的能力を制御し、ごく短い単位の時間を操作できる装置を作り上げた…少なくとも理論上は。

エコーの命名日に、友人たちがオールドハングリーのボロ時計を登ろうと誘い出した。そこでエコーはテスト前の装置を持って出かけていった。

ストリートチルドレンたちは塔を登り始め、たまに止まっては著名なピル公の悪意に満ちた似顔絵を一つ二つと落書きしていった。だが頂上近くまで来たそのとき、手をかけていた場所が崩れ、エコーの仲間の一人が塔から滑り落ちてしまった。本能的に──そして以前に千回も同じことをしたかのように──エコーは装置を作動させた。彼の周囲で世界がバラバラに砕け、エコーは渦巻く時間の粒子の中を潜って時の流れとは逆に、過去へと引き戻されていった。

そうしてエコーの時は戻り、再び仲間が腐った木材に手を伸ばしているのが見えた。木材がへし折れ、少年が転落する…しかし今回はエコーの準備ができていた。彼は時計台の端に滑り込むと、友人のシャツを掴んだ。エコーは友人を安全な所へ放り投げようとしたが、彼は時計塔の歯車に引っ掛かってしまっていた。そして──

停止。巻き戻し。

何度かやり直した後、ようやく友人の命を救うことができた。しかし彼の仲間たちの目には、エコーの超人的な反射神経が、誰も予期していなかった危険に反応して友人を救ったかのように見えた。エコーは彼らにクリスタルについて話し、秘密を守るよう誓わせた。だが彼らは、エコーがいればどんな危険からも救われると知り、これまでとは比べ物にならないほど愚かな挑戦をするようになった。

それらの試練(そして無数の失敗)を乗り越えるたび、エコーが「ゼロ・ドライブ」と名付けた時間歪曲装置の動作はより安定していった。ただし、それを繰り返すたびにエコーは体力を消耗するため、できることの限界は存在した。

エコーの時間歪曲を駆使したおふざけは、ゾウンとピルトーヴァーにおいて最も独創的かつ危険な権力者たちの関心を引いた。しかし、エコーの関心は仲間と家族、そして故郷の街のみに向けられている。エコーは愛する故郷の街が、いわゆる「進歩の都市」さえ霞ませるほどビッグになることを夢見ている。何世代にも渡る特権からではなく、純粋な挑戦心によって生み出された、ゾウンの卓越した創造力と尽きることのない活気が、ピルトーヴァーの金ぴかの虚飾を色褪せさせる時を心待ちにしているのだ。それを実現させる計画はまだできていないが、彼には時間が余るほどにある。

第一、過去を変えることができるエコーのゼロ・ドライブがあれば、未来を変えることの何が難しいというのだろう?

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子守唄
その日は一週間くらいに長い一日だった。

たとえでもあり、文字通りの意味でもある、エコーにとっては。何もかもが滅茶苦茶になり、あるべき形に戻すのは永遠の苦労の連続だったのだ。最初は、アジュナが「腹ペコ爺」を登ろうとして死にかけたこと。エコーに憧れ過ぎていた年下の少年がエコーのようになるため汚水溜めのど真ん中にあるその時計塔の側面をよじ登っていたのに友人たちが気づいた時には、もう手遅れだった。命取りになるところだったのは、最初の難しいジャンプだった。というか、なっていた、エコーがゼロ・ドライブを起動していなければ。実に18回、エコーは血も凍るような少年の叫びを、命が真っ逆さまに落ちていく反響を聞いていた、彼が命を落とすのを防ぐためにどの時点でどこでどうやって手助けすればいいかを突き止めるまでに。

それから、クラン・フェロスのお手付きになってるスクラップ置き場でジャンクパーツを漁ってた時には、特に攻撃的なヴィジルノートの一団に取り囲まれた。強化部品をゴテゴテと体に組み込み、生まれつき以上にブサイクになったデカ物ども。エコーは連中のスピードに驚かされたが、連中の殺しの作法にはそれほど驚かなかった。やつらの慈悲とかそういう感情のバックアップは人間同士のためのもので、エコーのような汚水溜めのカモに対しては作動しないのだ。絶体絶命の窮地から逃れられたのはゼロ・ドライブあってこそだ。何十回か巻き戻した後、方針を変えて新しいオモチャ「フラッシュバインダー」を試してみることにした。起爆すると閃光と共に、周囲のものを爆心に向かって吹き飛ばす、いや引き飛ばすようにできている、はずだった。

フラッシュバインダーは作動しなかった。設計通りには。起爆、そして興味深い現象が始まった。他の多くのエコーの発明品の爆発とは異なり、青熱する魔力の炸裂は、爆発の瞬間で凍り付いていた。震央からは青くうなるエネルギーのトゲが何本も突き出していた。円盤の無数の破片は致命的な威力で周囲を切り裂いた、カタツムリの這うようなスピードでねじれていくそれらが、通常の爆発の速度で放出されていた。閃光そのものさえ、空中に浮かぶ凍り付いた光の玉だった。

そして現象はさらに興味深い反応を見せた。爆発が爆縮し、破片が組み合い、放物線を精確に逆になぞりながらエコーの手のひらに収まったのだ、無傷のフラッシュバインダーが、そもそも起爆していなかったとでも言うように。

こいつはクールだ、エコーは思った。その瞬間を巻き戻しては、ヴィジルノートめがけて再び投げるのを何度か繰り返した。科学のためだ、もちろん。

家に帰り着いた時には、体は疲れていたが、頭は冴えていた。住居は実に機能的――家具は少なく、装飾は皆無。カーテンで仕切られた片隅がエコーの部屋で、古本の山とジャンクパーツが積まれ、ゼロ・ドライブとフラッシュバインダーの隠し場所だった。今日は珍しく両親が共に早く帰ってくる日で、エコーには話したいことがあった。

「ママ、パパ」筒型をしたゼロ・ドライブの表面に映った自分の顔を相手に、エコーは練習してみた。「オレはアップサイドのクランにも、お高く留まったピルトの学校にも行かない。ここに残るよ、ママとパパと友達のいるここに。オレはゾウンを裏切らないよ」

その言葉は自信に満ちていた、ただ一人この家で、壁と自分の鏡像だけが聞いていたから。そして返事は沈黙だけ。

玄関のドア越しに、カギの音が響く。エコーは大急ぎでゼロ・ドライブをテーブルの下に隠し、黒い布を被せる。この不安定なヘクステックの時間操作デバイスでの火遊びで、両親を心配させたくなかった。

ドアが開き、エコーの両親が帰ってきた――今夜の一回目。息子の目に二人はまるで別人のように映った。仕事に追われた彼らは、最後に二人揃っているところを見てから僅か数週の間で、ますます老けていた。二人の生活パターンはお決まりだった。くたくたになって帰宅し、その日の稼ぎで買った粗末な食事を分かち合い、残ったわずかな小銭を税金と口利き料のために貯金し、椅子に座ったまま寝落ちるのだ、エコーが作業靴を脱がし、肩を貸してベッドに連れていくまで。

二人の目の下のたるみは、その重みで背中が丸くなるほど。母親は両端が撚糸で括られた小さな紙の包みを、大切そうに抱えていた。

「うちの可愛い天才ちゃん」母親は元気な声を出そうとした、疲れ切った体から精一杯のエネルギーをかき集めて。少なくとも、テーブルに着いて待っていた息子を目にした瞬間の彼女の表情は、誰にも真似できないほど明るかった。

「やあ、ママ、やあ、パパ」家族三人でテーブルを囲むのはずいぶん久しぶりのことだった。もっとマシな挨拶があるだろ、そうエコーは密かに自分を責めた。

父親は誇らしげにほほ笑んで、それから息子のモヒカン頭をくしゃくしゃにしながら叱るようなふりをした。父親がこんなに老け込んでいなかった頃の顔、髪が若くして薄くなり、眉間に深いしわが刻まれる前の姿を思い出すのには努力が必要だった。

「髪は切れ、って言ったはずだぞ」父親は言った。「ピルトーヴァーの学校じゃあ目立ちすぎる。こんな髪でも入れる学校はファクトリーウッドだけだ。あそこはどんなバカでも入れる、バカが行く学校だ。そして、お前はバカじゃない。それで、どこに出願するんだ?」

いよいよだ。エコーは練習した言葉を舌に乗せた。だが、父親の希望に満ちた眼差しが、舌を凍らせる。

その沈黙の瞬間を埋めたのは、エコーではなく母親の声だった。

「いいものがあるのよ」母親が茶色い包みをテーブルに置いた。二人は椅子を寄せて、エコーが手を伸ばし、紐をほどき、撚糸をまっすぐにして、きちんとテーブルに並べるのを見た。エコーは厚紙が破れないよう、慎重に包みを開く。香ばしく、甘い香り――ナッツの砂糖漬けを散りばめ、蜂蜜をかけてパリッと焼かれた、小さな菓子パンが出てきた。エリーンのケーキだ。彼女の焼く菓子パンはゾウン一で、お代もそれ相当のものだ。エコーと仲間たちはよく、こんな高級品をためらいもなく買える金持ち連中から、彼女の作ったデザートをくすねたものだった。

エコーの目が両親の顔に走った。二人の目は輝いていた。「高すぎるよ」エコーは言った。「肉とかちゃんとした夕食を買わなきゃ、お菓子じゃなくて」

「お前の命名日を忘れるものか」父親は笑って言った。「お前は忘れてたみたいだな」

今日が何月何日なのか、エコーは完全に失念していた。だとしても、いくらなんでも高すぎるプレゼントだ。特に、両親の願いを裏切ろうとしている今日、この時には。罪の意識が喉元までせり上がってきた。「また家賃が遅れたら、大家にここから蹴り出されるよ」

「それはあたしたちで何とかするわ。あなたにはとっておきの何かがなきゃね」母親が言った。「さあ、お上がり。ケーキをご飯にできるのは、年に一度だけなんだから」

「母さんたちのご飯は?」

「お腹が空いてないの」彼女は言った。

「職場で済ませてきたんだ」父親が嘘をついた。「ピルトーヴァーのチーズと肉でな。実にうまかった」

エコーが一口かじるのを、両親はじっと見ていた。甘くてバターの味がして、手がべたべたになった。味わい豊かで、後味がいつまでも舌に留まった。エコーはケーキを三つに分けようとしたが、母親は首を振って、柔らかい声で朗らかに命名日の歌を口ずさみ始めた。両親とも、このケーキの分け前は遠慮するだろう。これは、エコーへの彼らからのプレゼントなのだから。

椅子に体を沈めてぐったりと寝落ちていなかったなら、父親も一緒に命名日の歌を歌っただろう。エコーが目を戻すと、母親も自分自身の子守唄に、うとうとと眠りに落ちるところだった。

エコーはファクトリーウッドに入るという未来を想像してみた。ぎりぎりの賃金で、どこか別の都市のために、別の誰かの栄華のために働く人生。そんなものは、飲み込めるわけがなかった。赤ん坊の頃に耳にした、両親がささやきあった会話の断片が蘇る。二人の発明と、クラン加入の夢。息子の誕生により白紙になった、世界を改善し、未来に貢献したはずのアイデアの数々。エコーにはわかっていた、自分は二人の最後の希望なのだと。けれど、自分はゾウンでの生活が好きだ。もし自分が両親の願い通りにしたら、一体誰が両親の、そして友達の面倒を見るんだ?

二人の夢をぶち壊しにはできなかった。今夜、自分の命名日には。たぶん、明日なら。

最初の一口をかじったきり、エコーはケーキを食べなかった。代わりにゼロ・ドライブを作動させた。彼の家が無数の色に分解され、混ざり合う。人々の日々の息吹が止み、絶対の沈黙が支配する。砕けた瞬間は光の渦となって、エコーを取り巻いた。

未来のかけらは過去へと組み直され、ドアが開き、エコーの両親が帰ってきた――今夜二回目。そしてこの後、三回、四回、五回、六回、と何度も何度も繰り返されることになるのだ。

巻き戻し、やり直す度、エコーは何一つ変えようとはしなかった。母の目が優しく輝き、父が誇らしげに微笑んでうなずく。ただ、エコーは重くなるまぶたと戦い続けなければならなかった、世界から盗み取った幸せの瞬間を、永遠に放さないために。けれどやがて、母親の柔らかな声が、小さな家の温もりが、エコーを眠りの世界に連れて行った。

その日は一週間くらいに長い一日だった。