ルル部ノート

LOLに登場するルルを愛して止まないルル部のブログです。

シンジドのバイオ(2021.11)

マッドケミスト
ルーンテラ中で「シンジド」と呼ばれる、ひねくれ者で理解しがたい狂人も、ピルトーヴァーに生まれた時はごく普通の人間だった。子供の頃から彼は驚異的な知性と尽きることのない好奇心を発揮していた。自然界の原理と相互作用に魅了された彼は、やがて名門ピルトーヴァー大学で奨学生として学ぶようになった。

才能が認められるまでそう長くはかからなかった。

自然科学に関するシンジドの研究は素晴らしいもので、革新的ですらあったが、そんな彼もヘクステックの発見によって魔法とテクノロジーの合成がもたらす可能性が取りざたされるようになってからというもの、ピルトーヴァーの注目がすべてそちらに向いてしまったことに気付かざるを得なかった。シンジドは蚊帳の外からその様子を見て、魔法とは、世界の仕組みを理解できないか、そもそもきちんと知ろうとしない人々がすがっている支えのようなものだとみなすようになった。そして彼は大学内でそうした流行を、目新しいだけで無知によるものと、声高に批判するようになった。

シンジドは流行を追わずに、錬金術の化学的可能性を掘り下げて研究し、その分野にとって有益な成果を残したのだが、そんな努力もむなしく学者仲間の冷笑を買ったに過ぎなかった。やがて資金は底をつき、彼は大学からも、ピルトーヴァーからも追い出されることとなった。シンジドは新しい生活を始めることを余儀なくされ、ゾウンに移住した。

地下都市では命の値段は低く、技術革新への関心は高かった。シンジドは新興のケミテック産業ですぐさま仕事を見つけ、たちの悪い種々雑多な客に、その技術と飽くなき意欲を提供した。彼の実験は倫理的に疑わしいものが多かったが、幅広い分野を網羅していた。人間や動物の拡張、そして拡張した人間と動物を融合する実験を筆頭に、無数の試みが行われていた。彼は驚異的な早さで新しい分野の研究を進めていたが、自身の健康を犠牲にすることも多かった。生物に必要な化学物質について誰よりも深く理解していた彼は、自身の集中力を保ち、一回の服用で何週間も続けて作業することができる興奮剤を発明した。しかし、薬が切れると彼は崩れるように倒れ、身体は震えて衰弱し、最終的には何日も眠ることになった。

シンジドが、錬金術師として異常なまでに働き続けたことで、後援者や顧客に困ることはなく、やがてノクサスのウォーメーソンまでもが彼の顧客となった。ピルトーヴァーとゾウンではとある噂が囁かれていた。ノクサス軍が帝国元帥とともにシュリーマ北部へ侵攻した際、ピルトーヴァーに法外な通行税を払ったため、帝国は破産寸前であり、すぐにでも金をかけずに征服できる地を他に探すことになるだろう、というのだ。シンジドにとっては、料金さえ払ってもらえればどうでもいいことだった。

小規模な仕事を途切れとぎれに何年もこなした末、シンジドはノクサスのエミスタン軍司令官から、膠着状態となったアイオニアでの戦況を打開するための協力を依頼され、錬金術師として契約を結んだ。彼女は、未だかつて誰も見たことがないような新種の兵器を必要としていた。そして彼女は…シンジドに富を与えることができる人物だった。

シンジドは金以外のことは考えもせず、自分の知恵と知識、そして経験をすべてこの新兵器の開発に注ぎ込んだ。研究の結果、不安定で危険な、世にも恐ろしい錬金術の炎が生まれた。ついにその兵器がアイオニアの地でノクサスの敵に放たれると、炎は岩を砕くほど熱く燃え盛り、周囲の大地は高濃度の金属毒によって、何も植物が育たないほどまでに汚染された。その光景は、エミスタンの友軍でさえも震え上がるほどだったが、彼女とシンジドが戦争犯罪者と呼ばれるまでには至らなかった。

今やシンジドは実験のための資金や材料はもちろん、被験体にすら困らなかったが、それでも自身が積み重ねてきた年月の重みを実感するようになっていた。彼の最新の研究は、明らかに生物学的な要素が多く取り入れられ、はるかに規模も大きいものだった。動物や人間、そして機械の融合に挑んだ最近の実験で、研究室が廃墟と化した上に、自分の顔面の形をボロボロの包帯で何とか保つ始末、被験体はゾウンの街に野放しという結果になってしまったが、シンジドはそれでも止まることはない。

肉体の破壊を極めた彼は、今ではその保存と変形…そして恐らく、いつか訪れる死に生命が抗う可能性について研究を進めている。